【藤原便り】現在藤原ダムは洪水貯留準備水位639.0mを超える運用を実施しています。これは渇水中のため641.0mを上限として、利水容量を通常より最大2m多く確保する特別運用によるものです。— 国土交通省 藤原ダム管理支所 (@mlit_fujiwara_D) 2016年7月19日
【渇水対策体制】相俣ダムは17日0時過ぎに洪水貯留準備水位を超えました。これは、渇水状態の中で洪水調節に支障のない範囲において、通常の洪水期゚制限水位を1m上げた運用で活用できる水を確保する特別措置を実施しているものです。制限水位をオーバーしていることに驚かないでください。— 国土交通省 相俣ダム管理支所 (@mlit_aimata_D) 2016年7月16日
制限水位をオーバーしている事に驚きました。
制限水位を超えて水を貯めている相俣ダムと藤原ダムの数字(川の防災情報より)
藤原ダムって弾力的運用してたっけ?ホントにホントの特別措置?— 星野夕陽 (@choidamnet) 2016年7月19日
一部のダムでは、大雨が多くなる洪水期(利根川では7/1~9/30)に大雨をダムに貯めて洪水を低減出来るように、ダムの貯水を減らす運用がされています。その洪水期間中は、洪水時以外は制限水位を超えて水を貯めません。
薗原ダムは弾力的運用。— 星野夕陽 (@choidamnet) 2016年7月19日
ちなみに薗原ダムでは「ダムの弾力的管理」という事をやっていて、普段から制限水位を超えて貯水しています。ただし、弾力的管理は精度の高い降雨や洪水の予測と速やかで確実なダムのちょ水位低下操作が必要なので、全てのダムで行えるものではありません。
特別運用とはなんぞや?というわけで、国土交通省関東地方整備局の河川環境課へ電話取材をしてみました。
藤原ダム・相俣ダムの制限水位超過の貯水運用は…
関東地方整備局指示による特別運用でした。
「これ、なんとかして(無茶振り)」みたいな感じ。
通常、ダムの操作は全て「操作規則」によって定められています。運用ルールがちゃんと明文化されていて、操作規則に則った操作しか出来ません。もし、制限水位いっぱいのダムで雨が降ったらどうなるでしょうか?
操作規則に則って放流し、制限水位以上水を貯めないように操作するしかありません。
そこで、操作規則改定を行わずに、今回の渇水対応に限って、制限水位以上に水を貯める特別運用を行っているとの事でした。
「操作規則改定を行わずに」という所がミソです。
操作規則の改定って多大な時間と労力がかかるから、今から対応してたら間に合わないんですよ。そのため、洪水に達しない流水の調節の延長で行っているという事でした。この指示・操作は「何とかこの危機を乗り切ろう」という国交省の本気度が伺えます。100%全力以上の力で対応しているわけです。
なお、制限水位を超えて貯める水量は洪水が予想される時に速やかに制限水位まで水位を落とせるよう設定されていて、24時間体制で気象状況を監視し洪水にもきちんと対応出来るようにしているそうな。制限水位を超過した状態で洪水に見舞われて下流で浸水被害があれば起訴まっしぐらなので当然ですね。
ちなみに、薗原ダムは既に弾力的管理を行っているために、これ以上水位を上げて貯める運用はせず、特別運用を行うのは藤原ダムと相俣ダムの2基だけです。
他のダムでは行わないのか?というと、(ここは僕の憶測ですが)貯水量が大幅に減少している矢木沢ダム・奈良俣ダム・下久保ダムで満水近くまで水が貯められたら、そもそも取水制限が解除されるくらい貯水量が回復する事になるかと思います。その時は特別運用自体不要になるでしょうね。
最後に、現在の利根川上流ダム群の貯水の状況です。
見ての通り、ダム湖が大きい矢木沢ダム・奈良俣ダム・下久保ダムで大きく貯水量が減少しています。8ダム全体の貯水量で見ると、平年の62%しかなく、平成6年の列島渇水と同程度になっています。
国交省の本気に応えられるように、僕も節水で協力していきたいと思います。
蛇足ですが…
僕はこの手の特別運用は嫌いです。
特別な対応というのは、対応する職員さん達に多大な負荷がかかる事です。
実際は利根川水系の水を使っている僕は助かるのですが、素直に喜べる事ではありません。
渇水の危機を乗り越えた暁には、今回の操作が悪しき前例とならぬように、反省や見直しなどをしっかりと行ってもらいたいものです。