只見ダムの洪水吐はどこにある?
只見ダムの洪水吐はフィルダムなのに堤体の中程に洪水吐があるように見える。洪水吐の左岸側 |
洪水吐の右岸側 |
上流側から見た只見ダム |
航空写真を見ると一目瞭然。
しかし、河川管理施設等構造令によって、フィルダムの堤体には洪水吐を作ってはいけない事になっている。
第四条 ダムの堤体及び基礎地盤(これと堤体との接合部を含む。以下同じ。)は、必要な水密性を有し、及び予想される荷重に対し必要な強度を有するものとするものとする。2 コンクリートダムの堤体は、予想される荷重によつて滑動し、又は転倒しない構造とするものとする。3 フィルダムの堤体は、予想される荷重によつて滑り破壊又は浸透破壊が生じない構造とするものとする。4 ダムの基礎地盤は、予想される荷重によつて滑動し、滑り破壊又は浸透破壊が生じないものとするものとする。5 フィルダムの堤体には、放流設備その他の水路構造物を設けてはならない。
堤体の上にあるように見えるけれど実際はどうなっているのか?
ぼや~っとあった疑問を改めて調べてみた。
只見ダムの構造
只見ダム関係の論文の中で見つけた図面でようやく理解出来た。出典:連続地中壁の只見 ダム基礎処理への適用 【土木学会論 文集 第397号/VI-9 (報告) 1988年9月 】 |
確かに只見ダムの洪水吐は堤体の上には乗っていない。
フィルダムの洪水吐の配置
しかし、堤体の上に乗っていなければどこに配置しても良いという事だろうか?これについては多目的ダムの建設に記載があった。
水路構造物が想定した基礎岩盤面内に埋設され、かつ、ダムの堤体となめらかに接続されて、外力及び浸透水に対して安全な構造である場合、及びダムの堤体に代わって外力に抗し、それ自体で基礎岩盤上に自立した越流型洪水吐(例えば複合ダムのようにフィルダムの堤体に隣接して形成されたコンクリート洪水吐、ダムアバットメントの基礎岩盤を棚状に掘削し、その上に堤体に代わり自立したコンクリート洪水吐を設けたもの等。)は、その趣旨からして第5項の規定は適用されない。要は、安全な構造で基礎岩盤の上に自立した洪水吐なら作っても大丈夫という事。
出典:昭和62年版 多目的ダムの建設 第3巻 設計I編
「多目的ダムの建設」によると、このような洪水吐を自立型越流式洪水吐というらしい。
その他の自立式越流型洪水吐
只見ダムの洪水吐のような自立式越流型洪水吐は他にもあるようだ。例えば水資源機構の寺内ダム。
よく見ると洪水吐の左岸側と地山の間に僅かなフィルダム部分がある。
出典:水資源機構 寺内ダム管理所 WEBサイト |
やはり洪水吐の左岸側にもフィルダムがある。これも堤体の上に作った訳ではなく、洪水吐は基礎岩盤の上にある自立式越流型洪水吐というわけだ。
他にもあるかも?
今まで気付かなかったがもしかすると他にも自立型越流式洪水吐があるかもしれない。只見ダム・寺内ダムの2基ともこんな事を知らずに訪問して後から気付いてしまった。今となればもう一度ちゃんと見たいと思ってしまうのでいつか再訪する事にしよう。
それと、ダムへ行く前に少し構造について調べてから行くようにしないと。